第25回受賞:橘木俊詔氏

橘木俊詔氏(京都大学大学院経済学研究科教授)
『家計からみる日本経済』
(岩波新書 2004年1月刊)

石橋湛山賞は、自由主義・民主主義・平和主義を標榜する湛山思想の継承発展に資するべく、 それにふさわしい著作を表彰する目的で、1980年に創設されました。

本年度・第25回石橋湛山賞(石橋湛山記念財団主宰、東洋経済新報社・経済倶楽部後援)は、 関係各位からご推薦を受けた約60編の著作の中から厳正なる選考過程を経て、 橘木俊詔氏の『家計からみる日本経済』(岩波新書、2004年1月刊)に決定いたしました。

受賞作は、経済3主体の1つ「家計」の視点から、戦後経済の分析と、 バブル期およびそれ以降の問題点の解析を行い、 社会保障制度についての改革案ならびに対応策を提示したものであります。 個人ないし家計に軸足をおいた著者の最近の研究執筆活動は、 我が国経済の分析と政策提言にとって重要な方向性を与えるものであり、また、 終生「有髪の僧」として「人」に着目し続けた石橋湛山の考え方にも通じるものがあるとして、 高く評価されました。

橘木俊詔氏の略歴

橘木俊詔氏 1943(昭和18)年、兵庫県生まれ。
1967年小樽商科大学商学部卒業後、1969年大阪大学大学院経済学研究科修士課程。
1973年米ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程(Ph.D.)を修了。
米・仏・英・独の大学・研究所勤務ののち、大阪大学・京都大学助教授をへて、現在・京都大学大学院経済学研究科教授。
男女共同参画会議議員、経済産業研究所ファカルティフェロー・研究主幹、日本経済学会副会長等も兼任。

主な研究分野は労働経済学・公共経済学で、 著書・論文は英文も含めて多数にのぼりますが、国内での近著では、受賞作のほかに、
『昇進のしくみ』(1997年、東洋経済新報社)
『ライフサイクルの経済学』(1997年、ちくま新書)
『日本の経済格差』(1998年、岩波新書)
『セーフティ・ネットの経済学』(2000年、日本経済新聞社)
『安心の経済学』(2002年、岩波書店)
『失業克服の経済学』(2002年、岩波書店)
『戦後日本経済を検証する』(2003年、東大出版会)
『安心して好きな仕事ができますか』(共編著、2003年、東洋経済新報社)
『封印される不平等』(編著2004年、東洋経済新報社)、などがあります。

受賞の挨拶

 このたび非常に栄誉ある『石橋湛山賞』を受賞することになり、心からうれしく思っています。 皆様のご支援に心から感謝申し上げます。受賞式ではまた、選考委員の相田雪雄様 (石橋湛山記念財団理事)から、過分のお褒めの言葉いただきまして、非常に恐縮しています。

 『石橋湛山賞』を貰うのにあたり、田中秀征氏の近著『日本リベラルと石橋湛山』 を読ませていただいて、非常に共鳴するところがありました。

 また、過去の受賞者のリストを拝見すると、日本のジャーナリズムの最先端を行っている方、 あるいは指導者になられている方が多く名前を連ねています。 私はそこへ名前を連ねるほどの仕事をしていないので、 「本当に貰ってもいいのかな」という印象を持っています。 リストには経済学と政治学の分野で非常に貢献をされた方々がいますので、私も、 この方たちの名を汚さないように、受賞を機にして、 今後もいろいろないい論文や本を書いていきたいと、あらためて覚悟を決めております。

受賞記念講演「家計からみる日本経済」

 今回、栄えある石橋湛山賞を受賞することになりまして、 非常に光栄に思っております。過去の受賞者のリストを拝見しますと、 いま日本の社会あるいは経済のオピニオンリーダーとして活躍している方の名前がずらり並んでおりまして、 私などがこんなところに入ってもいいのかなと思うぐらいの賞でございます。

 今日は受賞の記念ということですので、受賞の対象になりました 『家計からみる日本経済』をご紹介申し上げて、皆さんからご批判を受けたいと考えております。

 まず、この本を書くに至った動機について、簡単に申し上げます。

 一つには、日本経済は戦後から高度成長を経て今日まで、五十何年経過しましたが、 私は経済学者のはしくれとして、景気とか成長とか、その他もろもろ経済問題を語るときに、 企業の話がいつも前面に出てくるなと感じておりました。 当然、景気循環とか経済成長のエンジンになるのは企業です。 設備投資をやって生産力を高めて、企業が物を売って、家計がそれを買う ――ということをずっと繰り返してきて、 日本経済を語るときに企業の話がまず第一にくるのはやむをえないのですが、 経済の存在はいったい誰のためなのか考えたとき、それは国民ではないか。 いってみれば家計であり、国民が幸せになることが経済の存在の意義であると、 私は経済学者としてずっと考えておりました。

 そこで、企業のことと家計のことを同時に語るのが、 経済を語るうえで重要ではないかという問題意識から、この本を書きました。(以下、省略)

1.経済の幸福は国民にあり、企業と家計、両方をみてこそ
2.消費への起爆剤がなく、将来への不安感が横溢
3.石油危機を吸収した知恵、ワークシェアリング
4.なぜ、豊かさを実感しない家計だったのか
5.デフレ――企業と家計の影響の違い
6.所得格差の拡大、長時間労働・失業の併存
7.私の社会保障制度改革案

 ……(年金改革のほかに)、医療に関しても、 介護に関しても同様な改革案を私はこの本で述べておりますが、今後、 日本の経済を回復するためには、国民に漂う不安を解消する、 そのためには社会保障制度改革が絶対に必要だということを、 私の結論としてここで述べさせていただきます。

 どうもご清聴ありがとうございました。

「自由思想」97号(2004年11月発刊)に全文を掲載

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