石橋湛山新人賞

NEWCOMER

第18回

 

佳作

極山大樹氏

代表と私益
――近時のフランスにおける
利益相反規制・ロビイング規制をめぐる検討――

極山大樹氏
極山大樹氏

佳作

内藤正博氏

カール・シュミットと脱政治化の問題

内藤正博氏
内藤正博氏

佳作

山脇佳氏

母語支援員の役割に関する 
政策的議論の批判的検討
――移民集住/散在地域の
議会議事録の分析を通じて――

山脇佳氏
山脇佳氏

選考過程

石橋湛山記念財団では2008年度から、若手研究者を対象に、石橋湛山の思想(自由主義・民主主義・国際平和主義)に、直接・間接に関わる優秀な研究論文を表彰するとの趣旨で、「石橋湛山新人賞」を創設し、今年度で18回目を迎えました。 
選考の対象とするのは、①政治・経済・社会・文化・宗教等の人文・社会科学系領域、②原則として修士・博士課程の大学院生、③過去1年の間に『大学紀要』などの機関誌、学会誌等に発表された論文で、④全国の主要大学人文・社会科学系学部、学会等に推薦を依頼した結果、応募のあった論文の中から、選考委員会の協議によって決定します。 
今回の選考委員会には、上田美和(共立女子大学国際学部教授)、鈴村裕輔(名城大学外国語学部教授)、前田真一郎(九州大学大学院経済学研究院教授)の選考委員3氏と、石橋省三(当財団代表理事)が出席し、選考にあたりました(選考委員の井坂康志・ものつくり大学教養教育センター教授は都合により欠席)。 
今回は、5つの大学院から5編の応募論文が寄せられました。人文・社会科学系の若手研究者を支援する賞として、石橋湛山新人賞が定着してきたと思います。 
選考委員会は2月16日に開催され、3編の論文が新人賞選考対象となりました。しかし、残念ながらいずれも新人賞にはやや届かず、今後の期待を込めて、3作とも佳作とすることになりました。受賞者と論文は、以下の通りです。 
極山 大樹さん(一橋大学大学院法学研究科博士後期課程、4月から一橋大学大学院法学研究科特任講師)「代表と私益:近時のフランスにおける利益相反規制・ロビイング規制をめぐる検討」(『一橋法学』23巻3号)。 
内藤正博さん(大阪大学大学院文学研究科人文学専攻博士後期課程)「カール・シュミットと脱政治化の問題」(『待兼山論叢 哲学篇』第58号)。
山脇佳さん(中京大学大学院社会学研究科博士後期課程)「母語支援員の役割に関する政策的議論の批判的検討――移民集住/散在地域の議会議事録の分析を通じて――」(『移民研究年譜』第31号)。 
授賞式は4月3日に東洋経済ビルで行われました。受賞者の極山さんと、山脇さんにお越しいただき、石橋代表理事から賞状と副賞等を授与いたしました。なお、内藤さんは、イギリスに留学中のため欠席されました。

選考委員講評

上田美和教授
第18回石橋湛山新人賞は「本賞該当なし、佳作3作品」の選出となった。以下にその概要と選出理由を述べる。 
極山大樹氏「代表と私益:近時のフランスにおける利益相反規制・ロビイング規制をめぐる検討」 
極山氏の論文は、現代フランスでの社会活動における利益相反の問題を検討することによって、平等・公正という社会原則を問い直す。このように普遍的な問いを現代的かつ具体的な事例を紹介しながら検証していく手法は着実であり、好感をもった。極山氏はフランス語の一次文献を多数活用し、若手研究者として重要な技量を発揮している。 
「おわりに」で、日本の国会議員の利益代表問題はフランスの利益相反規制と比較して不十分な点があり、改善の余地があると示唆される。本論文はフランスの事例だけで十分成立しているので、日本の事例が出てくるには紙幅が足りず、やや消化不良気味に感じた。極山氏は、利益相反への対応の不十分さが現代日本の政治不信を招いていると述べるが、果たして、日本の有権者は利益相反やロビイングにそれほど厳しい目を向けているだろうか、政治不信の理由は別のところにあるのではないか、という疑問をもった。極山論文が示した〈代表と私益〉の問題は、いずれの民主主義国家にとっても切実な課題であり、今後の展開を期待するものである。 
内藤正博氏「カール・シュミットと脱政治化の問題」 
内藤氏の論文は政治学者カール・シュミットの1920年代前後のテキストに即しつつ、その脱政治化論を扱う。シュミットにおける脱政治化という視角の斬新性が評価された。 
第1の脱政治化は、中立的とみなされる領域において対立可能性を回避し、隠蔽する。第2の脱政治化は、神的・美的な領域ではそもそも政治的対立は起こりえないものとして処理される。このように、本来なら政治化する可能性があるにもかかわらず、脱政治化されたものとしてみなす私たちの問題をも示唆する。 
ドイツ哲学を専門とする研究者である内藤氏によるシュミットの原文解釈、および既存の訳書の解釈との異同についても、より紙幅を割いて解説いただければ、内藤論文の本来の意図がより強く伝わったのではないかと評者は考える。 
山脇佳氏「母語支援員の役割に関する政策的議論の批判的検討――移民集住/散在地域の議会議事録の分析を通じて――」 
山脇氏の論文は、日本語指導が必要な児童・生徒、保護者を支援する「母語支援者」に着目した独創性が評価された。地方議会議事録から政策を分析しているのも興味深い手法である。山脇論文は移民集住地域として豊田市を、移民散在地域として宝塚市をとりあげる。山脇氏がなぜこの地域をとりあげるのかの根拠は論文中で説明されているが、この2市から導き出された結論を果たして一般化できるのかについては、選考委員会で議論があった。今後は調査範囲の拡大が期待される。 
また、山脇論文が石橋湛山新人賞の応募カテゴリーにどこまで合致するのか、やや遠いのではないかという疑問がある。しかし、外国人移民問題が今日の日本社会で喫緊であることは論をまたず、そこに他者への寛容の有様をよみとることは湛山精神の現出だ、と考えることは可能である。 
以上のように、3論文とも優れた視点と豊かな展開可能性をもちながらも、それぞれに疑問の余地や再考の必要を内包する研究であったため、今年度は「佳作」の選出という結論に至った。選考委員会でも話題になったが、生成系AIの普及以降高まる“文系不要論”に対して、石橋湛山新人賞はどのような見解を示すべきなのかが問われていると感じる。評者としては、石橋湛山の名が冠された新人賞の意義を念頭におきつつ、今日苦境にある人文・社会科学領域の若手研究者を励まし、応援する役割を果たしたいとの意を強くした。

鈴村裕輔教授
第18回石橋湛山新人賞は、本賞の該当がなく、佳作として3氏が選出されました。いずれも学術的、社会的に重要な示唆に富み、本賞の受賞の可能性を秘めた論文が佳作となったことは、若手研究者の研究奨励の点からも意義深いことです。そこで、以下に3氏の選出の理由および今後の研究活動への期待を紹介します。 
内藤正博氏「カール・シュミットと脱政治化の問題」 
現在、カール・シュミットについての議論は、政治的な現象の本質が友と敵との対立にあるとする「友敵理論」や独裁と専制政治を区別する「例外状態」、さらには法の本質や妥当根拠について権力的意思の決断を重視する「決断主義」が主な対象となっています。しかし、シュミットの主要な概念の一つである「脱政治化」(depoliticization)を主題とする研究は十分になされていません。 
内藤正博氏の論文「カール・シュミットと脱政治化の問題」は、題名の通りシュミットの脱政治化論について、1929年の論文“Das Zeitalter der Neutralisierungen und Entpolitisierungen”(邦訳:中立化と脱政治化の時代)を中心に据え、シュミットがどのようにして脱政治化の概念を理論付けたか、またいかにして脱政治化と隣接する中立化の概念を規定したかを検討しています。そのうえで、シュミットが唱えつつ明示することのなかった脱政治化と弁証法との関係が二つの類型にまとめられています。すなわち、脱政治化の第1の類型は、対立が生じないとされたために中心となった中立的な領域において生じる対立可能性の回避と隠蔽であり、第2の類型は、対立が生じたために廃棄されることを通して中立化された領域において、起こり得ないものとして生じる政治的対立となります。 
これら二つの類型化はシュミットが無自覚的に行ってきた議論を精読することで可能となっており、ある意味でシュミット自身も気付いていなかったかもしれない概念操作の過程を明示しています。このような仮説の提起は一つの概念や事象に着目し、対象を内在的に検討することで描かれなかったことの存在を浮き上がらせるという思想史の研究の魅力を、読者に遺憾なく伝えるものです。 
今回はシュミットの著作の既存の翻訳を参照しつつ、内藤氏が自ら原文を訳出して議論が進められました。本論文を含むこれまでの研究成果を踏まえ、遠からず内藤氏によるシュミットの論考の新訳が上梓されることが期待されます。 
研究の着眼点の鋭さや検討の実証性の高さ、そして今後の研究の発展の可能性の大きさを含め、内藤正博氏の一層の議論の深化を願います。 
極山大樹氏「代表と私益:近時のフランスにおける利益相反規制・ロビイング規制をめぐる検討」 
本論文では、政治的な意思決定という公的な過程が一部の「私益」とどのように関係し、「私益」が公共の利益にどのような影響を与えるかが検討されています。対象となったのは、2010年代のフランスにおける利益相反とロビイングの規制です。 
極山大樹氏は、専門であるフランス法やフランス政治に関する知見に基づき、2010年代にフランスにおいて設けられた利益相反に関する諸規程を憲法学上の論点や独立行政機関による監督の実効化および権力分立原理、さらにロビイング規制と代表や国家観のあり方との関係から検討を進めます。その際、事実上標準化された手法であるイタリアの行政法学者ベルナルド・ジョルジオ・マッタレッラの類型に基づき議論を始めるのは、極山氏の議論の周到さの一端を示します。 
また、種々の規制が制定される過程を分析する中で、フランスの現状を的確に指摘する点も、本論文の特徴の一つです。例えば、国民の代表による決定は全ての一部の者のみに適用される特殊利益から独立し、普遍的ないし不特定多数の者に適用される一般利益であるとする代表観や国家観がフランスにおいて大きなもち、そのために政治家や公務員による汚職が起きても十分な規制が導入されず、特に利益相反規制が他の先進諸国よりも遅れたという議論は、一般利益を実現する国民の代表の決定という「フィクティブな前提」として提示されます。 
このように、専門的な議論を行いつつも大局的な視点を失わず、しかも明晰な分析を行う本論文は、フランス法やフランス政治に親しみのない読者に対しても大きな説得力をもちます。それだけに、「おわりに」において本論文で得られた知見を日本にも応用しようとしたことは、意欲的ではあるものの検討が不十分となっており、議論全体の迫力を薄めてしまいました。本論文の成果に基づき、稿を改めて日本における利益相反規制の発展の過程と日本社会における代表観と国家観を検討すれば、さらに説得力のある議論がなされることでしょう。 
今後の議論の一層の発展と研究領域の開拓への期待とを合わせ、極山大樹氏の大いなる活躍に期待します。 
山脇佳氏「母語支援員の役割に関する政策的議論の批判的検討――移民集住/散在地域の議会議事録の分析を通じて――」 
周知の通り、人口の減少と少子高齢化の進展による労働力の不足などから、外国人労働者を受け入れることが不可欠とされています。その一方で、技能実習制度や特定技能制度などの現行の仕組みは、特定技能制度2号を除いて日本滞在の期間に制限が設けられたり、家族の帯同が認められていなかったりするなど、外国人を労働力としてのみとらえ、基本的な人権への配慮の点で改善の余地を残しています。 
こうした状況の中で、外国人労働者受け入れ拡大に伴う就労支援の一環として日本語教育の重要性が高まっており、政府も日本語教育推進法などの関連法令を整備しています。これは、外国人労働者の日本語能力を向上させることで地域社会との断絶や疎外感を覚えることを防ぎ、外国人と日本人との共生の可能性を高めようとする政府の方針を示しています。ただし、具体的な施策は政府の方針がいかにかかわらず、各地方自治体の努力に依存する側面が大きいのが現状です。 
山脇佳氏の論文「母語支援員の役割に関する政策的議論の批判的検討――移民集住/散在地域の議会議事録の分析を通じて――」は、こうした実情に基づくとともに、学術的な価値をもつだけでなくきわめて今日的な重要性を備えていることが分かります。すなわち、外国人問題に直面し、外国人の地域社会への受け入れのために種々の政策を遂行している地方自治体の取り組みについて、政策の決定から遂行、そしてその結果までを含む包括的な研究であり、国や地方を問わず、外国人政策のこれまでの成果と今後の方向性を考える上で重要な役割をもっています。 
政策提言という観点から考えると、本論文は制度の改善を示唆するにとどまっています。また、対象として愛知県豊田市と兵庫県宝塚市のみを選んだことの妥当性と適切性について検討の余地があることも事実です。しかし、外国人労働者の問題が社会的な関心を集める今日において、公知の情報に基づいて議論することの意義は大きく、今後のさらなる研究の発展の可能性を秘めているといえます。 
議論の今日的な意味の大きさと研究のさらなる発展という点からも、山脇佳氏による研究の進展が期待されます。

前田真一郎教授
複数の受賞候補作品について選考委員会で審議を行った結果、今回は3作品を石橋湛山新人賞の佳作受賞にふさわしいと判断した。今回の受賞候補品はいずれも独創的であり、多様な視点から論述されていた。そのなかで、特にこれら3作品は甲乙つけ難く、将来的な発展性も考慮して選出した。 
まず内藤正博氏の「カール・シュミットと脱政治化の問題」についてである。本論文は、「シュミットによる自由主義批判とロマン主義批判を、脱政治化という一貫したテーマの下で読むことができるということを示すものである」。脱政治化という用語を用いて、脱政治化論の類型化を行っており、一貫性がある。具体的には、脱政治化の中心領域が、時代とともに変化していく様子を考察している。例えば、「中心領域と中立化」の記述において、「18世紀においては全てが道徳的教育の問題となり、19世紀においては全てが経済的問題(貨幣の生産と分配)になる」といったように、各時代の中心領域から問題が捉え直されてきたのである、「マルクス主義に代表されるように、19世紀の中心領域は『経済的なもの』なのである。シュミットが言う中心領域とは、『人間が自らの現存在の中心を見出す』領域である」と述べている。 
その上で、「なぜ中心領域は一つに安定せず、移転し続けてきたのだろうか」との課題を設定し考察を行っている。研究史の整理が正しければ、本論文には一定の新規性が認められる。シュミットが脱政治化という用語を用いて論じなかったことも含めて考察しており、シュミット本人が気付いていない点を見出していると感じた。このような脱政治化の動きを追うことは、現代の問題・課題にも通じる部分がある。また思想史のなかで、その範囲で言えることを述べており、単なる古典の解析に留まっていない点も考慮した。 
次に極山大樹氏の「代表と私益:近時のフランスにおける利益相反規制・ロビイング規制をめぐる検討」についてである。本論文は、フランスにおける利益相反規制・ロビイング規制をもとに公的意思決定に対する私益の影響をどのように管理・統制すべきかという課題を考察するものである。具体的には、以下二つの分析視角をもとに検討している。一つ目の分析視角は「規制の実効化・規制によって課される義務の遵守を監督するために設けられた独立行政機関による監督の実効化と憲法上の要請とをいかにして調整するか」、二つ目の分析視角は「一連の規制を、フランスの古典的な国民代表像、またその基礎にある国民像・国家像という視座からどのように評価できるか」というものである。 
このような分析視角をもとに具体的な事例を紹介しながら着実に検証を行っている。非常に手堅い分析手法をとっており、フランスの状況についての考察は参考になった。ただし、「おわりに」の部分については、日本とフランスでは制度的・社会的背景が異なることもあり、日本への示唆がどこまで導き出せるのかについては疑問に思った。今後さらなる研究の発展を期待したい。 
最後に山脇佳氏の「母語支援員の役割に関する政策的議論の批判的検討――移民集住/散在地域の議会議事録の分析を通じて――」についてである。本論文は、日本語指導が必要な児童生徒や保護者を支援するために母語を用いて通訳・学習補助・生活支援を行う母語支援員を分析対象として、地方議会議事録を分析し、母語支援員の役割が政策的にどのように形成されてきたのかを考察している。母語支援員制度自体が十分に知られているとは言い難いなかで、本論文はその政策的形成過程を明らかにしており、興味深い内容であった。移民集住地域として愛知県豊田市、移民散在地域として兵庫県宝塚市を取りあげている。豊田市と宝塚市の市議会が公開している議事録をもとに、どういった役割が母語支援員に求められているのかについて、2地域においてあぶり出すことに成功していると感じた。 
議会議事録に注目する理由として、地方議会議員が自治体の政策決定に関する議論で影響力を持つことを考慮した点も理解できる。その一方で、この2地域だけで母語支援員全体を論じて良いのか、議事録の中で取り上げたデータ以外にも有効なものがあるのではないかという疑問を持った。今後は対象地域を広げて定量的な分析を行うなどさらなる研究の発展が考えられる。

受賞のことば

極山大樹氏
この度は、拙稿を石橋湛山新人賞佳作にご選出いただき、誠にありがとうございます。身に余る光栄に存じます。審査員の先生方には、大変貴重なご講評を賜りましたこと、厚く御礼申し上げます。 
本論文は、公的意思決定に対する私益の影響を統制する方法の一例として、フランスの利益相反規制・ロビイング規制をとりあげ、その紹介・検討を行うものです。論文執筆にあたっては、詳細な制度紹介を心掛けつつも、単なる制度紹介だけではなく、①憲法判例分析を通じて具体的な憲法上の問題を論じるとともに、②基礎的な概念をもとに制度を評価することにしました。 
研究の専門分化が進み、一つの学問分野内でもさらに専門が細分化される状況にあります。私の専門である憲法学の統治機構論においても、細かい制度論と基礎理論がそれぞれ独立に展開される傾向が見受けられます。これは、研究の精緻化という点で大きな意義を有するものです。もっとも、基礎理論にもとづいて制度を論じること、具体的な制度を意識しながら基礎理論を展開することが、それぞれの研究をより深化させると考えることにも、一定の妥当性はあるように思われます。 
こうした問題意識のもと、本論文においては、具体的な制度を詳細に検討する論文の中で、基礎理論的な検討を行うことを試みました。本論文がその目的を十分に果たせているかについては心もとない限りではございますが、一研究者として一つの研究のあり方を提示することができていれば幸いです。 
今回の受賞は、ひとえに、これまでの私の研究を支えてくださった方々のおかげでございます。とりわけ、指導教員の只野雅人先生には、修士課程の頃から常に温かく研究指導をしていただきました。改めて感謝申し上げます。また、ここでお一人ずつ名前をあげることこそ叶いませんが、大学院ゼミ・学会・研究会等を通じてお世話になったすべての方々に御礼申し上げます。 
今後は、石橋湛山新人賞佳作受賞者の名に恥じぬよう、より一層真摯に研究に取り組んでまいります。

内藤正博氏
この度は、第18回石橋湛山新人賞におきまして、拙稿「カール・シュミットと脱政治化の問題」を佳作にご選出いただき、誠にありがとうございます。慎重かつ厳正な審査のもと、このような評価を賜りましたことを大変光栄に存じます。ご多忙の折にもかかわらず審査の労をお取りいただきました審査委員の先生方、ならびに記念財団の皆様に、衷心より深く御礼申し上げます。 
ロンドン滞在中のため授賞式に出席かなわず、直接御礼申し上げる機会を得られませんこと、深くお詫び申し上げます。 
また、学部以来今日に至るまで、常に刺激的な議論を通じてご指導を賜って参りました舟場保之教授に、心より感謝申し上げます。あわせて、日頃より示唆に富んだ議論を重ねてくださった研究室の皆様にも、心より御礼申し上げます。 
本論文は、ドイツの公法学者カール・シュミットが議会主義批判の中で練り上げることとなった、「脱政治化」の概念を分析したものです。シュミットがヴァイマール期に展開した自らの政治観は、議会主義に代わる独裁を称揚するものでした。しかし本論文では、シュミットの脱政治化論を精読することにより、その議論構造を解明し、同時にその論理的必然性を相対化することを試みました。これにより、「危機」に瀕する議会主義に対していかに応答しうるかという問いに対し、シュミットとは異なる方向性を、シュミット自身の議論の内部から提示することができたと考えております。 
学問の社会的有用性や即時的成果が求められる昨今の趨勢において、古典的著作を注意深く読むという地道な作業に挺身し続けることは容易ではありません。しかし本論文が、現代的課題を考える思考の糸口として、文献研究が持つ今日的意義を多少なりとも証左するものと評価いただけたのであれば、研究者として望外の喜びに存じます。 
最後に、研究生活を物心両面で支え、温かく見守ってくれた両親と兄に、感謝を申し上げたいと思います。

山脇佳氏
この度は、自分の実力以上に名誉な賞を受賞することができ、とても嬉しく思います。それと同時に、気が引き締まる思いでいっぱいです。 
この論文は、私が実際に母語支援員として働いている現場で感じた「問い」と、これまでの研究者の方々が丹念な調査の上で明らかにしてきた母語支援員の「問題」が結びついたことで生まれたものです。つまり、この研究は決して私一人の「独創性」が秀でたものではなく、これまでの知の蓄積のうえに成り立っているものです。 
日頃からとても丁寧に手厚く指導していただいている先生、論文のアドバイスだけでなく社会問題の現場において実践的な関わりへと導いてくださる先生方、わからないことを一緒に悩んでくださる周りの研究者の方々、さらに学校や支援の現場でお会いする方々がいなければ、このような光栄な賞はいただけなかったと思います。この場を借りて、心からお礼を申し上げます。 
これまでの日本で、「移民問題」がここまで取り上げられるようになったことはあったでしょうか。昨今の政治的な論争や選挙の場において、「移民問題」はもはや聞き慣れたワードの一つです。しかし、移民当事者やかれらを支える/支えようとする人々の声は、社会においてすくい上げられることは多くありません。母語支援員の議論においても、肝心の子どもや保護者のありようはあまり多く語られず、どのように「適応」させるか、という話題が多くあがっていました。 
ここに、「移民問題」と母語支援員の問題がリンクしていると認識しました。それは、当事者の声を聞かずに、政策が進められていくことです。さらにいえば、多くの場合、移民やマイノリティ側が政策のありようを決める権限を持っていません。 
こうした社会問題の一つとして、母語支援員の課題を考えていきたいと思います。課題だけでなく、意義も合わせて発信していくことで、よりよい制度につながることを願っています。 
この度は、大変光栄な賞を与えていただき、ありがとうございました。