石橋湛山新人賞NEWCOMER
第1回
受賞作
伊藤 真利子氏(青山学院大学大学院総合文化政策学研究科博士課程)
郵便貯金の民営化と金融市場―金融変革期における郵便貯金
『青山学院大学社会科学紀要』第36巻第2号
伊藤 真利子(いとうまりこ)氏略歴
伊藤さんは1980年生まれ。青山学院大学大学院経済学研究科を修了し、同総合文化政策学研究科・五年一貫制博士課程在籍。他の論文に「郵政民営化の政策決定過程――構造改革との整合性」(『青山学院大学社会科学紀要』第37巻第2号)があります。
選考委員講評
増田弘氏
新人賞の構想から三~四年になるが実現してよかった。ある意味で伊藤さんの論文は硬さがよい。資料に基づいてガッチリ、堅実に書いている。最初から柔らかく書くような人は伸びない。よりすばらしい第二第三の論文を書かれて、学界での活躍を期待します。
藤原帰一氏
今日、学界まで老齢化してしまっては大変で、新人賞に心から賛成する。郵政民営化という誰でも分かっている問題でも、実はその目的は時期によって変わってきたことを実証的に跡づけている。この論文の先を聞きたいので、今後に期待します。
小菅信子氏
第一回が女性になったのは嬉しくすばらしい。まじめに取り組んで誤魔化さずキチッと仕上げているところに好感と期待がある。これからも触れる資料すべてが研究の糧になっていくが、勉強したことすべてを書くのではなく、どれだけ取捨選択するかが良い論文のコツであるという、私が言われた言葉をはなむけとします。
原田泰氏
私も石橋湛山賞をいただいたばかりなので、伊藤さんが大変初々しく喜んでおられて、新人賞にふさわしい。郵政民営化は現在に至っても議論が尽きず、流動的な面がある。その中で、五五年体制の総決算という政治的課題から提起されたという観点は非常に新鮮で、それをキチンと調べて分析されている。今後ともこのスタイルで研究されることを期待します。
授賞の挨拶
石橋湛山さんを冠した大変重みのある賞をいただき、非常に恐縮しながら光栄に思い感謝しています。論文ではミクロ・マクロ的の視点をクロスしながら、金融市場または公共という大きな枠組みの中に位置づける試みをした。取材をした多くの方々の肩の上から見える景色をできるだけ忠実に描こうとしたが、文章・文体・文量とも非常に長く反省しています。石橋先生の著書に「叩けよさらば開かれん」とありましたが、この賞を励みとして、精進していきたと思います。