石橋湛山新人賞NEWCOMER
第3回
受賞作
丸尾 美奈子氏(早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程・日本生命保険相互会社法人企画部調査役)
オーストラリアの年金制度について―高齢者社会における自助努力型年金制度の新しいあり方
早稲田大学『商学研究科紀要』第71号掲載(2010年11月発行)
佳作
濱井 潤也氏(広島大学大学院博士課程後期、現広島大学大学院文学研究科特任助教、くらしき作陽大学非常勤講師)
マイケル・ウォルツァーの正戦論における道徳性について――ウォルツァーの政治哲学における『情念』との関係
『ぷらくしす』第11号掲載、2010年3月発行
丸尾美奈子(まるおみなこ)氏略歴
早稲田大学法学部卒業後、三菱銀行に総合職として入行。その後シティバンク(米国)での勤務を経て、ニューヨーク大学ロースクールに留学、MCJ、LLM(国際税法)学位取得後、日本生命(相)に総合職で入社、現在、法人企画部調査役として勤務。一方で早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程に在籍中です。
選考委員講評
授賞式は3月末に予定されましたが、東日本大震災のため取り止め、別途、賞状・副賞等をお贈りいたしました。授賞式での選考委員方々の推薦・講評の言葉も、残念ながら今回はなくなりましたが、選考会での選評・議論では以下のとおりでした。
原田泰氏
オーストラリアの年金は、税による基礎年金と個人の拠出による二階建てであり、現在日本で議論されている税・社会保障一体改革についても、重要な知見を提供するものである。制度の説明は分かりやすく、問題点もよく整理されている。ミーンズテスト(資産調査)が貯蓄率を低めるという分析も興味深い。海外の良い制度の紹介が、日本の制度の改善に与える影響は、日本の制度の実証分析よりも、しばしば有益なこともあり、丸尾論文を推薦したい。
増田弘氏
現代日本の緊要とする年金問題を、オーストラリアにおける現実の年金制度を実例として比較考査することによって、日本の問題点を照らし出し、将来の方向性を提示している。その実証能力および分析能力は一定の水準を超えており、文章も読みやすく、論理性に富み説得力がある。
藤原帰一氏と小菅信子氏
「専門外なので評価するに適任ではないが」としながらも、「テーマ設定や論証部分はストイックで非常によい」(小菅氏)、「日本の年金制度を論議する上でも、一つの比較対象として、オーストラリアの制度とその改革の動きを分析する意義はあると思う」(藤原氏)、とされました。
賞の贈呈には、三菱銀行時代の同僚として結婚された夫君・丸尾篤嗣さんも同席された。篤嗣さんは現在、あすか製薬(株)執行役員に就任されています。
選考過程と論文要旨は、「自由思想」122号(2011年5月刊)に掲載しています。