石橋湛山新人賞

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第6回

受賞作

堅田 智子氏(上智大学大学院文学研究科 史学専攻 博士後期課程在籍)

アレクサンダー・フォン・シーボルトと黄禍論

『上智史学』第57号、2012年11月号所収

堅田智子氏
堅田 智子氏

堅田 智子氏略歴

1987年東京都生まれ、2010年 上智大学文学部史学科卒業、2012年 上智大学大学院文学研究科史学専攻博士前期課程修了(歴史学修士)、 2013年2月~2014年2月 ドイツ・ハイデルベルク大学哲学部歴史学講座、日本学研究所留学、司馬遼太郎財団主催2007年度第11回 司馬遼太郎フェローシップ受賞。
  研究テーマは“明治日本の「ドイツ化」”。外交史、法制史、メディア史の観点から研究を 行っている。受賞論文の他に、以下の論文等がある。
  論文「アレクサンダー・フォン・シーボルトと獨逸学協会学校」『獨協学園資料センター研究年報』第5・6号、2014年
  論文「アレクサンダー・フォン・シーボルトの日本皇室観」『上智史學』第59号、2014年11月刊行予定
  翻訳「アレクサンダー・フォン・シーボルト『欧州国際法への日本の加入』」『紀尾井論叢』第1号、2013年
  研究報告「ブランデンシュタイン=ツェッペリン家所蔵アレクサンダー・フォン・シーボルト関連史料調査報告」『紀尾井論叢』第2号、2014年
  今後の抱負について、堅田氏は「アレクサンダー・フォン・シーボルトの外交活動を基軸として、明治期の日独関係について研究を進めています。 シーボルトの研究を進めれば進めるほど、明治政府内の親独派の存在、親日ドイツ人コミュニティーなど、その時代を生きた『人間』の密接した関係性を 追わなければ、「ドイツ化」を進めた明治日本の姿を究明できないという思いが強くなりました。 これからも博士号取得という長年の目標のもと、日々、研究と真摯に向き合い、さらなる研究の発展に寄与できればと考えています。」 と語っている。

選考委員講評

藤原帰一氏
とてもわかりやすく書かれたリーダブルな論文である。その点は選考委員の誰もが一致した。しかし、シーボルトに注目した意味が 今ひとつ明確でないきらいがあった。これだけの筆力と、問題をとらえる能力をもっているのだから、大きな課題に挑戦してほしい。 たとえて言えば、大きなキャンパスにとても綺麗に書かれた一角がある、他の部分は輪郭だけが描かれている。湛山賞本賞を目指して、 大きなキャンパスを埋めていく仕事を期待したい。

原田泰氏
選考は難航したが、私ははじめから堅田さんを推した。アレクサンダー・シーボルトという外交官を発掘し、面白い議論をされていることが 評価された。対象論文は黄禍論を中心としているが、元の修士論文の『対外弘報』という論点、現代にも通じるこの論点も評価された。

若田部昌澄氏
読みやすく面白く書けている、新人賞には、若手研究者をエンカレッジする=励ますという面があり、励ますに値するかが選考のポイントとなった。 作品そのものの評価と同時に、研究者としてのポテンシャルというか、『のびしろ』というかを評価する面がある。注文をいえばきりがないが、 将来性を期待して授賞した。二年前から選考委員を務めているが、その間女性が二名受賞した。女性の活用という点では、石橋湛山記念財団は良い 仕事をしていると思う。

授賞の挨拶

シーボルトの研究を始めたのは、これだけおもしろい人物が、ほとんど知られていない。日本人ではない、ドイツ人でありながら、日本のために働いている人物に、なぜスポットライトが当たらないのかというところが研究の出発点です。昨年一年間はドイツに留学し、アレクサンダー・フォン・シーボルトの 子孫のお宅に伺いました。なぜ日本の人は知らないのか、ぜひ『弘報』をして欲しいというお話もいただきました。研究への思いを新たにして、帰国したところで、 賞をいただき感激しています。私はBoyではないのですが、Ambitiousの面は常に持ち続けていきたいと思います。