石橋湛山賞

prize

第38回

受賞作

水島治郎著

ポピュリズムとは何か―民主主義の敵か、改革の希望か〈 中央公論新社 2016年12月刊 〉

受賞者略歴

水島 治郎 (みずしま じろう) 氏

1967年生まれ。
東京大学教養学部卒業、1999年、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。日本学術振興会特別研究員、甲南大学法学部助教授、千葉大学法経学部教授などを経て、現在、千葉大学法政経学部教授。専攻はオランダ政治史、ヨーロッパ政治史、比較政治。

著書/共著
『戦後オランダの政治構造 ― ネオ・コーポラティズムと所得政策』
(東京大学出版会、2001年)
『反転する福祉国家 ― オランダモデルの光と影』
(岩波書店、2012年、第15回損保ジャパン記念財団賞受賞)
『保守の比較政治学』
(岩波書店、2016年)

選考過程と授賞理由

2017年度・第38回の「石橋湛山賞」(石橋湛山記念財団主宰、東洋経済新報社、経済倶楽部後援)受賞作は、千葉大学法政経学部教授の水島治郎氏による『ポピュリズムとは何か―民主主義の敵か、改革の希望か』(中央公論新社、2016年12月刊)に決定いたしました。全国の有識者からご推薦いただいた40を超える著作・論文の中から、厳正なる審査を経て選出されました。
ポピュリズムは日本では「大衆迎合主義」とも訳され、ともすれば自由と民主主義への脅威として非難されがちです。
しかし、「現代デモクラシーを支える『リベラル』な価値、『デモクラシー』の原理を突きつめれば突きつめるほど、結果として、ポピュリズムを正統化することになる」と水島氏は言います。
オランダ政治史を専門とする著者は、ヨーロッパ、ラテンアメリカでのポピュリズムの誕生と発展を精緻に分析、ポピュリズムが、政治から排除されてきた周縁的集団の政治参加を促進し、政治革新をもたらしたプラス面を評価するとともに、排外主義や独裁政治につながりかねないマイナスの側面をも明らかにしました。
日本でも既存政治への不信が募る中、ポピュリズム的現象と直面しつつあり、本書のもつ価値は極めて高いものがあると言えます。

授賞式は10月2日(月)、また記念講演(経済倶楽部主催)は11月10日(金)にいずれも東洋経済ビルで行われます。

2017年8月
一般財団法人 石橋湛山記念財団