石橋湛山賞

prize

第39回

受賞作

新井紀子著

AI vs. 教科書が読めない子どもたち〈 東洋経済新報社 2018年2月刊 〉

受賞者略歴

新井 紀子氏(あらい のりこ)氏

国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長
一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長
東京都出身。一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業、
イリノイ大学5年一貫制大学院数学研究科単位取得退学(ABD)。
東京工業大学より博士(理学)を取得。専門は数理論理学。
2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」
プロジェクトディレクタを務める。
2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。

著書/共著
『ハッピーになれる算数』『生き抜くための数学入門』(イースト・プレス)
『数学は言葉』(東京図書)
『改訂新版 ロボットは東大に入れるか(よりみちパン!セ)』(新曜社)など。

選考過程と授賞理由

2018年度・第39回の「石橋湛山賞」(石橋湛山記念財団主宰、東洋経済新報社、経済倶楽部後援)授賞作は、国立情報学研究所教授の新井紀子氏による『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社、2018年2月刊)に決定いたしました。全国の有識者からご推薦いただいた40を超える著作の中から、厳正なる審査を経て選考されました。
新井氏は一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業。数理論理学が専門。2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務めています。
「東ロボくん」と名付けた人工知能(AI)を育ててきた新井氏は、本書でAIの可能性と限界をリアルに解明し、「AIが人間の知力を上回るとき、いわゆる”シンギュラリティ”が到来する」という巷間に流布する説に対しては、数学者として、これを明確に否定します。
一方、AIが代替することの出来ない能力、”意味”を理解する「読解力」こそが、重要だとして、独自に基礎的読解力を診断するテスト(RST)を開発し、全国2万5000人の調査を行った結果、3人に1人が「簡単な文章が読めない」ことが解ったといいます。
本書はAIについて、わかりやすく説明する啓蒙書であると同時に、現在の日本の教育に警鐘をならし、子どもたちに読解力=「教科書を読める能力」をつける教育実践を提起している教育書でもあり、教育者でもあった石橋湛山の名を冠する本賞にふさわしいものといえます。

授賞式は10月11日(木)、また記念講演(経済倶楽部主催)は11月30日(金)に、いずれも東洋経済ビルで行われます。

2018年9月
一般財団法人 石橋湛山記念財団