石橋湛山賞

prize

第41回

 

受賞作

琉球大学人文社会学部准教授 山本章子氏

日米地位協定―在日米軍と「同盟」の70年〈 中央公論新社 2019年5月刊 〉

受賞者略歴

琉球大学人文社会学部准教授

山本 章子氏(やまもと あきこ)氏

1979年北海道生まれ。 2003年一橋大学法学部卒業、2007年一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。 2007年から2012年第一法規株式会社に編集者として勤務、2015年一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)、沖縄国際大学非常勤講師を経て、2018年琉球大学人文社会学部国際法政学科講師、2020年より同准教授。専攻は国際政治史。

著書/共著
『米国と日米安保条約改定――沖縄・基地・同盟』 (吉田書店、2017年、日本防衛学会猪木正道賞奨励賞)
『米国アウトサイダー大統領――世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』 (朝日選書、2017年)
共著『沖縄と海兵隊――駐留の歴史的展開』 (旬報社、2016年)
共著『日常化された境界――戦後の沖縄の歴史を旅する』 (北海道大学出版会、2017年)

選考過程と授賞理由

2020年度・第41回の「石橋湛山賞」(石橋湛山記念財団主宰、東洋経済新報社、経済倶楽部後援)授賞作は、琉球大学人文社会学部准教授山本章子氏著『日米地位協定――在日米軍と「同盟」の70年』(中央公論新社、2019年5月刊)に決定いたしました。全国の有識者からご推薦いただいた50を超える著作の中から、厳正なる審査を経て選出されました。
本書は、在日米軍の駐留に視点を据えて戦後の日米関係史を概説しています。山本氏は特に、日米両政府が60年の日米安保改定、地位協定締結の際に、取り交わした「日米地位協定合意議事録」を問題視します。2004年まで非公開だった「議事録」は民主主義国家間の条約や協定の正統性を著しく阻害すると主張。日米同盟関係には深い闇のようなものが感じられるが、それはこの「合意議事録」によるところが大きく、また米軍への「”過剰な優遇”の根源」であると指摘します。
日米同盟の真価が問われようとするとき、国会で承認されていない「合意議事録」を撤廃することが喫緊の課題だと山本氏は主張します。深い信頼関係が土台になければ強固な同盟関係は成り立たないからです。
本書は日米同盟を重視しつつ、米国に対しても、非は非と主張し続けた石橋湛山の名を冠する本賞にふさわしいものといえます。
なお、授賞作以外に最終選考に残ったのは以下の3点です。
将基面 貴巳『愛国の構造』(岩波書店、2019年7月)
『日本国民のための愛国の教科書』(百万年書房、2019年7月)
益尾知佐子『中国の行動原理』(中央公論新社、2019年11月)
諸富徹『資本主義の新しい形』(岩波書店、2020年1月)

授賞式は10月23日(金)に東洋経済ビルで行われます。

2020年9月
一般財団法人 石橋湛山記念財団