石橋湛山賞

prize

第45回

 

 

受賞作

株式会社日本総合研究所調査部主席研究員 河村 小百合著

日本銀行 我が国に迫る危機〈 講談社現代新書 2023年3月刊 〉

受賞者略歴

株式会社日本総合研究所調査部主席研究員

河村 小百合(かわむら さゆり)氏

1988年京都大学法学部卒業、日本銀行入行。1991年株式会社日本総合研究所入社。2001年主任研究員、2014年、上席主任研究員、2019年より現職。財務省財政制度等審議会財政制度分科会委員(現職)、国税庁国税審議会委員、厚生労働省社会保障審議会委員、内閣官房行政改革推進会議構成員(民間議員)等を歴任。著書に『中央銀行の危険な賭け: 異次元緩和と日本の行方』(朝陽会、2020年)、『中央銀行は持ちこたえられるか――忍び寄る「経済敗戦」の足音』 (集英社新書、2016年)、『戦後80年はあるのか「本と新聞の大学」講義録』(共著、集英社新書、2016年)、『欧州中央銀行の金融政策〔世界の中央銀行〕』(金融財政事情研究会、2015年)などがある。

選考過程と授賞理由

2024年度・第45回の「石橋湛山賞」(石橋湛山記念財団主宰、東洋経済新報社、経済倶楽部後援)授賞作は、株式会社日本総合研究所調査部主席研究員・河村小百合氏著『日本銀行 我が国に迫る危機』(講談社現代新書、2023年3月刊)に決定しました。全国の有識者からご推薦いただいた多くの著作の中から、厳正なる審査を経て選出されました。
著者は、黒田総裁の下で日本銀行が異次元金融緩和を長期にわたって続けたことにより、日本経済や財政運営に大きなひずみとリスクを与えたと指摘しています。欧米諸国の中央銀行が行った金融緩和策は、短期的な危機管理として出口戦略も早くから検討されていたのに比べ、日本では異次元緩和がアベノミクスの放漫財政を助長する道具と化したと分析。その代償として財政破綻の危険性を強く訴え、戦後の日本やアイスランド・ギリシャでの事例や豊富なデータをあげてリスクを検証しています。そして政府や日銀に場当たり的な運営ではなく、腰を据えた政策運営を求めるとともに、国民一人ひとりが危機感を共有しなければ、この困難な状況を乗り越えることができないと警鐘を鳴らしています。
こうした視点や問題意識はきわめて時宜を得たものであり、多くの読者に理解してもらいたい内容であると評価され、石橋湛山賞としてふさわしいとなりました。なお、授賞式は1119()に東洋経済ビルで行われます

2024年10月
一般財団法人 石橋湛山記念財団