石橋湛山賞prize
第46回
受賞作
一橋大学大学院経済学研究科教授 佐藤 主光著
日本の財政
──破綻回避への5つの提言〈 中公新書 2024年5月刊 〉
受賞者略歴

一橋大学大学院経済学研究科教授
佐藤 主光(さとう もとひろ)氏
1969年秋田市生まれ。1992年一橋大学経済学部卒、1994年一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。1998年クイーンズ大学大学院経済学研究科博士課程修了、Ph.D。1999年一橋大学大学院経済学研究科講師、2002年同助教授、2009年同教授、2012~2013年度一橋大学国際・公共政策大学院長、2014~2016年度国立大学法人一橋大学役員補佐。2016~2022年度一橋大学社会科学高等研究院医療政策・経済研究センター長。2023~2024年度一橋大学経済学研究科長。
政府税制調査会委員・特別委員、財務省財政制度等審議会委員、内閣府規制改革推進会議委員など歴任。1999年C.A.Curtis賞受賞。2019年日本経済学会石川賞受賞。2024年紫綬褒章受章。
主な著書・共著に『ポストコロナの政策構想──医療・財政・社会保障・産業』 (共著、日経BP日本経済新聞出版本部、2021年)、『公共経済学15講』(新世社、2017年)、『地方税改革の経済学』(日本経済新聞出版社、2011年、エコノミスト賞)、『震災復興 地震災害に強い社会・経済の構築』(共著、日本評論社、2011年)、『財政学』(放送大学出版、2009年)、『地方財政論入門』(新世社、2008年)、『地方交付税の経済学──理論・実証に基づく改革』(共著、有斐閣、2003年、日経・経済図書文化賞、NIRA大来政策研究賞及び租税資料館賞)がある。
選考過程と授賞理由
2025年度・第46回の「石橋湛山賞」(石橋湛山記念財団主宰、東洋経済新報社、経済倶楽部後援)受賞作は、一橋大学大学院経済学研究科教授の佐藤主光氏による『日本の財政──破綻回避への5つの提言』(中央公論新社、2024年5月刊)に決定いたしました。全国の有識者からご推薦いただいた多くの著作・論文の中から、厳正なる審査を経て選出されました。
著者は日本を代表する財政学者であり、本書ではわが国の逼迫する財政の現状、財政赤字の原因、そして財政再建に向けた有効な手段を提示しています。現在の財政危機は平時から財政規律が欠如していたことに原因があると述べ、一般国民が危機感を持ちながら自分事ととらえていない現状を懸念しています。
財政の重要なテーマである短期的な景気対策と中長期的な成長対策において、国民の強い要望や政治の思惑から財政支出が前者に偏り、人口減少や国際情勢の変化など、大きな課題への対応が後回しになっていると指摘。財政の基本概念に立ち戻って、税制や財政ルールの見直し、国民の生活や経済の成長に欠かせない支出は守る一方、効果にエビデンスが乏しい支出は削減するワイズスペンディングなど、財政再建の方策を網羅的に論じています。
そして「財政民主主義」により国民が財政をコントロールし、規律付け、民主主義で財政赤字を解消できるか試されていると、本書を締めくくっています。
こうした問題意識や啓蒙的な内容が評価され、石橋湛山賞にふさわしいとなりました。
なお、授賞式は11月25日(火)、東洋経済ビルで行われます。
2025年10月
一般財団法人 石橋湛山記念財団